ブンブン文楽 ☆ らんらん落語

好きに任せて東へ西へ。素人うなぎは何処へ行く・・・

萌えビームと査定眼が交錯する文楽若手会

【2016年6月/文楽既成者研修発表会@東京】

文楽若手会『 妹背山女庭訓』( いもせやまおんなていきん )

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突然ですが、伝統芸能ゴハンを食べてく人達って、どういうルートで入門しているかご存知ですか?

血筋? ご家業的な繋がり? 

和事のお稽古をしてたお子さま達?

はたまた、ファンが高じて弟子入り志願!?

確かに、確かに・・・。

でも、そういったパターンの他に、実は国が支援する養成機関があるのです!(ジャジャン!!)

 

東京の国立劇場では、歌舞伎に携わる俳優や演奏家(竹本・鳴物・長唄)、能楽三役(ワキ方囃子方狂言方)、さらに太神楽や寄席で活躍するお囃子さんなどのコースがあります。

大阪の国立文楽劇場では、文楽太夫・三味線・人形の三業全てが対象です。

(※研修機関についての詳細は、後日改めて書きますね)

 

それぞれの養成機関の卒業生と、業界団体の中で独自に修行を始めた方達を合わせ、若手世代の修練成果を発表する会が毎年夏頃に行われています。

私が先日うかがったのは、その名もズバリ “ 文楽若手会 ” 。

演目は、人気名作『 妹背山女庭訓 』の後半部分でした。

 

素直なガンバりに萌えMAX

 

古典芸能の世界では、50、60歳でも鼻タレ小僧と言われる位ですから、今回の20~40代前半のメンバーは まだまだ下積み中で、本公演では端役がほとんど。

しかしながらイケメン男子やストイック系テクニシャンなど、注目株はゴロゴロいますから、青田買いのファンもゴロゴロいます(東京2公演は、発売早々にソールドアウト!)。

休憩中のロビーや帰り道の人波では、あの太夫と三味線のコンビは良かったねとか、あの人形遣いは上手くなったねとか、ご贔屓の成長ぶりに話の花が咲いておりました。

芸は未熟でも、精一杯のガンバリを見せる真剣な姿には、思わず萌え心をそそられて応援したくなっちゃうのが人情ですよね☆

 

鬼の目光る!

 

もちろん、舞台に向けられているのは好意的な視線ばかりではありません。

厳しい目の最たる人が、育成当初から関わってきた文楽協会と劇場の幹部です。

特に『 妹背山 』の後半部分は、昨年9月と今年4月に本公演があったばかり(来る10月と3月の地方興行のメインもこれ。今年度の強化演目であります)。

だから、ここである程度ちゃんとしたものを見せられないと、「 なにボケーッとしとったんじゃー!! 」 ということになります。

また、出来が良ければ出世のチャンスに1歩前進。

当日の会場最後方には、2月に引退された人間国宝豊竹嶋太夫師匠はじめ、人形部の大看板、吉田玉男師匠・桐竹勘十郎師匠らもお見受けしました(三味線部の方は別の場所で聴いておられたと思われます)。

 
個人的な感想をいえば・・・

 

ここからは、個人的な感想です。

全体的に太夫の方々のガンバりに感心させられました。

人間国宝太夫が相次いで引退や逝去され、唯一の切場語り(太夫の最高格)の豊竹咲太夫師匠も病気療養中。

危機がリアルに迫った時、使命感を背負った男は、これほどシッカリするものなのかと驚きました。

また、その女房役となる三味線方の充実ぶりもうれしい限り。

パワー全開やんちゃ盛りといった風の小住太夫と寛太郎さん、安定感バツグンの睦太夫清志郎さんの2組は評判も上々だったようです。

 

で、私の心に1番残ったのは、「鱶七上使の段」を語った希太夫の奮闘でした。

色白で細身の外見もあって女性役タイプの印象だったのですが、これがなんのなんの! 

手段を択ばない極悪キャラ(蘇我入鹿)に豪胆ヒーロー(鱶七)、色仕掛けの女官軍団まで見事な音域で力強く鮮明に描き分け、汗だくになって約1時間語り切ったのです。

おいおい、こんなにデキる人とは聞いてないよー!(笑)

 

そういえば、希太夫と三味線の清じょうさんのコンビは、昨年3月の若手素浄瑠璃の会で『 妹背山 』のクライマックス「 金殿の段 」をやってたっけ。

大阪公演だったので聞き逃してしまいましたが、その時から比べてもきっと成長してるに違いない・・・。

今回は先輩の睦太夫が語る後出部分「金殿の段」と登場人物の肚(はら=性根)の表現に遜色がないよう、筒いっぱい(目一杯)がんばっていました。

おとなしめの希太夫には、イケイケリードの清じょうさんみたいな兄貴が合ってるのかな?( ←勝手な妄想です。違ってたらスミマセン!!)

 

人形方の皆さんは、だいたい想定内な感じでしたが、まだまだ大ざっぱな動きをする人の多い中で、紋壽師匠門下の3兄弟(紋臣さん・紋秀さん・紋吉さん)の丁寧さには安らぎを感じました。

紋壽師匠や大師匠の紋十郎師匠・文五郎師匠を目指して、これからもくじけず真心込めて励んで頂きたいなぁと思います。

 

何はともあれ、若手技芸員のみなさん、本当にお疲れさまでした。

これからの益々のご活躍と来年の若手会を楽しみにしています!

 

※サポートで黒子協力された中堅の人形遣いの方々は下記の通り。

吉田文昇さん、吉田幸助さん、吉田一輔さん、吉田勘市さん、吉田清五郎さん、吉田玉佳さん、吉田簑一郎さん(順不同)。

お疲れさまでした!